こんにちは。

今回は高度成長経済を回復するための3本柱として考えている短期的な円高推進、中期的な税制改革から説き起こして、前回は書き切れなかった長期的課題である雇用環境における極端な男女差別の是正について補足したいと思います。

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円安は百害あって一利無し!

いまだに自国の通貨が安くなることになんらかの利点があると考えている人がいますが、完全に間違っています。

円安には、日本で生産されるモノやサービスを安売りするだけではなく、日本国民の労働も資本も、土地も資源も、ありとあらゆるものを安売りして、海外から輸入するモノやサービスや資源を高く買わされるという以外の意味は何ひとつありません。

「でもアベノミクスの円安政策で企業利益は史上最高水準まで増加したじゃありませんか」とおっしゃる方もいます。ですが、実際の貿易統計は円安でモノが大量に売れるようになったわけではないと示しています。

まず赤の折れ線で示した輸出数量を見ると、コロナショックで激減した2020年春から秋のへこみを取り戻すために2021年の春から秋に急増しました。それ以外の時期ではほぼ一貫して横ばいから約10%減少の範囲で推移しています。

それではこの間、日本の輸出総額はジリ貧化していたのでしょうか? まったく違います。企業は青の折れ線で示した円の対ドルレートが下がる(円安になる)以上に輸出品の価格を上げて、少ない数量でも輸出総額を増やしていたのです。

日本企業がたんに円安を埋め合わせるだけではなくそれ以上の値上げをしていたことは、次のグラフにはっきり出ています。

2020年1月から2024年11月までのほぼ5年のうち、2020年3月から2024年11月までは円買い介入が多少効いた2024年9~10月以外全面的に円安でした。企業がこの円安を「輸出数量が増える」とありがたがって放置していたら、ドル建て輸出価格も減っていたでしょう。