国民大多数の生活水準は下がりつづけているのに、企業と株式市場参加者だけが儲けている現状を打破するための切迫した課題は明白です。

ありあまるドル建て外貨準備を取り崩して円買い・ドル売り介入をおこなって、着実に円高へ、しかも3~5年程度の射程で現状の1ドル150円台から1ドル70~80円への円高を目指すことです。次のグラフをご覧ください。

政府・日銀は輸出産業や金融業界には有利でも国民には損な円売り介入は積極的におこなってきたけれども、その逆のドル売り介入はスズメの涙程度しかおこなってこなかったので、膨大な金額のドル準備を溜めこんでしまったことがおわかりいただけるでしょう。

円高に転換すれば、現在高すぎる企業の利益水準は適正なレベルに低下すると共に、実質勤労所得が激増し、サービス化して重厚長大産業の巨額投資より多くの世帯の消費に依存することが多くなった日本経済の成長率も飛躍的に向上します。

なぜ米国財務省債を中心に緊急にドル建ての外貨準備を取り崩して円に転換することが焦眉の短期的課題かと言えば、先端産業から国際貿易、外交・軍事とあらゆる局面で現在のアメリカ合衆国はどう頑張ってもあと2~3年しか保たないからです。

どうにも滅亡はまぬかれないと悟ったとき、アメリカの為政者たちはまず少しでも早く国家財政から破綻させて、莫大な対外債務をチャラにすることを最優先で臨むでしょう。そのとき最大の被害をこうむるのは、国全体の米国債保有高が世界最大の日本なのです。

ここまで深刻な事態を期限を切って公言するについてはそれなりの根拠がありますが、日本経済中心のこの投稿では概略だけでも長すぎる話になってしまいます。

ですから、興味をお持ちの方はぜひウェブマガジン『増田悦佐の世界情勢を読む』に現在連載中の『マグニフィセント7は化けもの屋敷』、前篇、中篇、そして後篇をぜひお読みいただきたいと思います。

税制は階段関数から傾斜関数に

次に中期的課題です。税制および社会保険料という名の別口の租税負担とのからみで、どうすれば税と年金の負担と受益を平準化するかという話題は、日本の経済論壇ではいちばん人気のあるテーマのようで、議論百出で止めどなく論争が続いています。