もう一つが②多方面展開戦略であるが、これは、米国一辺倒ではない国際関係構築をして行くということだ。こう書くと、民主党政権時の悪い想い出が多くの国民の頭をよぎり、昨今の日中間の様々な懸案の存在もあって、中国とやたらに近づくのは警戒した方が良い、という声が聞こえそうだ。

しかし、ここで言いたいのは、あくまで米国一辺倒ではないということである。すなわち、中国との関係を特に濃くするということでもなく、文字通り、多方面においてルート構築を強化していくということだ。

総理が年明け早々に、マレーシアやインドネシアを訪問したのは、そうした大戦略の一部であると期待したいが、まさに、アジアにおけるイスラム国として存在の大きな両国、経済的・人口的にインパクトの大きい両国を重視して、総理が訪問する形での対話の外交を展開したことは、この文脈に合った話だ。

出来れば、日本は①東西の両文明を良く理解する国として、②アジアの代表であり欧米の価値観を理解・体現する国として、また、③戦後の焼け野原などの途上国状態から世界の最先端の先進国状態の両方を知る国として、グローバルイッシュー特に紛争解決などに汗をかく“成熟国家”としてのプレゼンスを多方面で発揮すべきだと思う。

その際、オーストラリアやトルコや北欧など、一見、ちょっと距離がある国々と組み、同じ文明等の間(はざま)にある国として、色々な社会の気持ちが分かるということで紛争等の仲介を積極的に行う国同士の連合の構築を主張しても面白い。

こうして、多方面で紛争解決等に務めることが、反射的に結果として、戦争による出費を嫌うトランプ政権の関心を引き、日米関係が更に好転するきっかけになる可能性もあると思う。

①や②はリスクヘッジにもなる。つまり、中国とアメリカが劇的に和解する場合などの保険になるということだ。

可能性は必ずしも高くはないが、中国は、トランプ大統領が好みそうなディール、すなわち、金にあかして米国の農産物などを大量に購入することで、逆に、アジアにおける安保に口を出すなと言ってくる可能性はそれなりにある。その場合、トランプは、経済的利益の代わりに、例えば台湾を見捨てることになるが、可能性はゼロではない。古代ローマとカルタゴ、ヌミディアの故事もある。