朝日新聞が言うように「デジテル技術の進歩にもかかわらず成長率がかえって鈍る矛盾が広がった」。それはGDPがモノしか計算せず、価格ゼロの情報を勘定しない(できない)からである。
現代ではモノより情報の比重が高いのだが、それが一部の情報巨大企業に牛耳られている。企業の売上が大国のGDPを上回る日は遠くない。そして、これらの企業は社会の脅威になっているが、もはや政治の力ではコントロールできない。
目指すべき価値とはこの書評の冒頭で著者の“価値”には注意を要するとしたが、P.13から“価値”についての見解がまとめられている。カール・ポランニーとかジョセフ・スティグリッツに言及しつつ、「われわれ人類にとって、本来、目指すべき価値とは何か」(P.15)と問うている。
価値とは何かを問う、その答えに価値が出てしまっているから同義反復のきらいがあるが、著者はこれまでの経済学の価値論を「それはさておき」として通過する。それから振り返って自分なりの“価値”を把握したようだ。これについては後に述べる。
資本主義崩壊「資本主義終焉への引導」は「情報化」であると本書のメイン・メッセージを示す。
資本主義というイズム(著者の言葉)だけでなく、「私たちのものの考え方や精神も変るから文化を含めて社会全体が変わっていく。
資本主義は「自身の体内から生まれた「情報化」という進化の鬼っ子によって、消え去ろうとしている」(P.26)。
では、なぜ「情報化」で資本主義はおしまいになるのか。これが第2章のテーマだ。「情報化」が「資本主義の仕組みを根底からひっくり返し」てしまうのは(P.29)、情報がモノとまったく違うからだ。
① モノの価値がエネルギーの量やその効率性から生まれるのに対して、情報の価値は、エネルギーの様相から生まれる。
「エネルギーの様相」は著者が本書で示すキーワードのひとつだが、実はこれがわかりにくい。