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学んだこと利潤はモノの生産から生まれるから、それが縮小していけば利潤は減る。情報化時代が利潤縮小の時代だというのは、本書に教えられたことだ。先進国のうちでもGAFAMなどがない日本の利潤率は傾向的に低下している。失われた30年だ。
このことに関してもうひとつ本書からの示唆がある。
実質賃金が30年間上がらなかった、つまり、働く人々の窮乏化は進んだのに、大きな不満が生まれず、反資本主義の運動も盛んにならなかった。その背景には、労働組合運動の停滞、幹部の保守化、組織率の低下など主体的要因もあるが、もうひとつある。
それは、賃金が上昇しなくても、つまりモノ(賃金)で計測した豊かさは後退しても、タダの情報という恩恵が働く人々・普通の人々にも及んだため、総効用、使用価値の総体は増加した。だから、人々の幸福感は保持されたのではないか。これは本書から受け取ったメッセージである。
情報化を経済学がどう処理するか。これは私達、経済学者に残された課題である。平松民平の説のように価値法則を拡大する・延長するのもひとつの考え方だ。
情報とモノという違うものをいかにして統一して把握できるか?それは経済学にとっては楽しみな課題でもある。