こうした「測定の文脈によって、観測される物体の性質が変化してしまう」という特性を「文脈性(contextuality)」と呼びます。

この事実は、私たちが当たり前と思い込んでいた古典的な直感──「測定してもしなくても、もともと物体の性質は一定」──が、量子レベルでは通用しないことを示しています。

人間の感覚に基づく“常識”が、宇宙の根本的な法則とはイコールではないことを示す例と言えるでしょう。

言い換えれば、量子では「どの性質を、どんな測定方法で、何と一緒に測ろうとしているか」によって“確定した状態”そのものが変わりうるわけです。

これは、量子粒子の性質があらかじめ独立して一つずつ決まっていない可能性を示唆しているとも言えます。

非局在性とは何か?

量子力学における非局在性とは、「遠く離れた場所にある粒子同士が、あたかも瞬時に影響し合うかのように強い相関を示す」という不思議な現象を指します。

まず、古典的には「遠く離れた2つの物体」は、それぞれが独立して存在していると考えます。

たとえば、2つのりんご AとBを何十キロも離れた場所に置いたとします。

日常の常識では、りんごAの「色」や「質量」を測っても、普通はりんごBの「色」や「質量」には何の影響も与えません。

「Aが赤い」「Bが青い」と決まっていれば、それらはあらかじめ両方のりんごが持っている“それぞれの”性質です。そして、測定によって相手の状態がガラッと変わってしまうなんてことはないからです。

言い換えると、遠く離れた物体同士が、突然“瞬間的に”連絡を取り合う(影響し合う)ことはないというのが私たちの古典的直感です。

ところが量子力学では、「もつれ(エンタングルメント)」という現象が起こり得ます。

2つの粒子(電子や光子など)を、特殊な方法でもつれ状態に準備すると、2つの粒子はたとえ空間的に離れていても、お互いの測定結果が通常の常識で考えるよりも強い相関を示すようになります。