この点は、1月25日のTBS報道特集によっても明らかにされている(《追い詰められていた元兵庫県議の竹内英明さん 「でっち上げ」と発言した立花孝志氏は【報道特集】》)。同番組でインタビュー取材に応じた立花氏も、それらが根拠に基づかない「疑惑」に過ぎなかったことを認めている。
「竹内氏が警察に逮捕されることを苦に命を絶った」との事実摘示が全くの虚偽であることは、その内容からして明らかである。
最後に、(ⅲ)の「摘示した事実が虚偽であったことが判明した後の行動」である。殺人の「未必の故意」の場合であれば、「喧嘩の末にカッとなって刃物で人を刺したが、その後すぐに我に返り、すぐに救急車を呼ぶなど懸命の救命措置を行った」というような場合、「未必の殺意」を否定する方向に働くのと同様に、立花氏が、虚偽の事実の摘示を行った後に、それが虚偽だとわかって、それによる死者の名誉毀損、社会的評価の低下の程度を最小限にとどめるような行動を行っている事実があれば、「未必の故意」を否定する方向に働く。
しかし、実際には、立花氏は、投稿後、警察関係者が全面否定する記事が出た時点で、投稿を削除し、訂正・謝罪をしたものの、その後も、竹内氏の社会的評価を低下させる(サ)の言動を継続している。虚偽の事実の摘示による死者の名誉毀損の影響を最小限にとどめようする姿勢は全く見受けられない。
以上のとおり、立花氏が竹内元県議の死亡の直後に、「竹内氏が警察に逮捕されることを苦に命を絶った」などとYouTubeで発言したことについて、「虚偽の事実の摘示」についての「未必的な故意」は十分に認められると考えられる。
竹内氏の死亡についての立花氏のYouTubeでの発言は、人が亡くなった直後に、死亡原因について社会的評価をおとしめる虚偽の事実を発信し、そのような名誉毀損発言が、SNSで大量に拡散したものであり、死者の名誉毀損として、遺族感情という保護法益を害する程度がもっとも大きい態様の行為だと言える。