まず(ⅰ)の「虚偽の事実を摘示する動機」についてであるが、立花氏は、知事選の期間中に、街頭演説で竹内氏について、あたかも斎藤氏のパワハラ問題をでっちあげたかのような批判を行い、それが、立花氏の支持者によってネット上で大量に拡散され、竹内氏に誹謗中傷が集中した(ウ)。その誹謗中傷が竹内氏の家族にまで及び、それに耐えかねた竹内氏は知事選の直後に議員辞職をしたが(エ)、その後も、竹内氏に対する誹謗中傷が続いた(オ)。
これらの経過から、竹内氏の死亡について、立花氏側の竹内氏に対する攻撃とそれに呼応する立花氏の支持者によるネット上での誹謗中傷の拡散が起因しているのではないかと疑われる。竹内氏の死亡について、立花氏がその責任を問われかねない立場にあったことは間違いない。立花氏には、そのような自己の責任を回避するために、死亡の原因が別の問題にあったかのような話を作り上げる動機は十分にあった。
次に、(ⅱ)の「摘示した事実が虚偽であることの明白性」であるが、立花氏が摘示した事実は、もし、事実であったとすれば、警察が捜査遂行上、本来厳重に秘密が守られるはずの「特定人の逮捕の予定」である。
警察の捜査予定が、マスコミにリークされ、いわゆる「前打ち報道」が行われることもあり得ないわけではないが、それが、もしあったとしても、情報提供先はマスコミである。別の刑事事件で警察の任意の取調べを受けている立場にある立花氏に、捜査機関側が他人の逮捕の予定という捜査情報を提供する理由は全く考えられない。立花氏が、警察の逮捕予定について正確に情報把握できたとは全く考えられない。
一方で、立花氏は、竹内氏に関する投稿削除後も、 (サ)の「竹内氏は、犯罪に当たるようなことをやっていたので、警察の任意取調べや、逮捕の対象となるのが当然だった」などと発言している。もし、それが事実だとすれば、「竹内氏が任意取調べを受け、逮捕される予定だったこと」の現実的可能性があったことになるが、立花氏が、選挙期間中に行った「竹内氏に対する攻撃」がほとんど根拠に基づかないものであり、竹内氏が、「犯罪に当たるようなことをやっていた」という事実も、警察から取調べを受けていたことも考えらえない。