その爆発で放出された物質が、近くの分子雲(星の卵となるガスのかたまり)に注入されると、そこで生まれようとしていた小さな星の材料を一気に“化学的に豊か”にするのです。

つまり私たちの太陽系も、この壮大な星の最期の“贈り物”を受け取った可能性が高いというわけです。

実際の観測でも、オリオン座やはくちょう座などの星形成領域には大質量星が多数存在し、互いに影響を及ぼし合いながら、新たな星や惑星が次々と生み出される様子が確認されています。

私たちの太陽系も、そうしたにぎやかな星団の中で“母なる大質量星”と運命をともにしたと考えられるのです。

この「大質量星の最後の輝き」は、太陽系の材料となるガスや塵を“こねて”くれたと表現してもよいでしょう。

そう想像すると、46億年前のドラマチックな舞台が目に浮かんできます。

そして、その証拠は隕石の中にしっかりと残されていたのです。

隕石の中に隠された証拠:太陽系は2世代目以降の産物

大質量星が散り際に放った“贈り物”は、どのように今の太陽系へと受け継がれたのでしょうか。

その答えを知るための重要な手がかりが、実は隕石に秘められています。

隕石は、小惑星帯や彗星など、太陽系の“端っこ”や“あいまいな境界”で作られた天体のかけらが地球に落下してきたものです。

その多くは、46億年前の太陽系が誕生し始めた頃の“化学的な指紋”をほとんど失わずに保存している、言わばタイムカプセルです。

というのも、私たちが普段触れる地球の岩石は、長い年月の間に火山活動やプレート運動で再加工され、46億年前の姿はすっかり“塗り替え”られています。

その点、小惑星などは内部に地質活動がほとんど起こらず、形成直後の状態を保ち続けたまま今日に至りました。

そこから落ちてきた隕石は、太陽系最初期の物語を閉じ込めた鉱物サンプルなのです。

そんな隕石の中には、今回の研究で大きな役割を果たす2つの“しるし”が刻まれています。

散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた
散りゆく超新星の傍らで太陽系は生まれた / 超新星爆発で合成された26Alはベータ崩壊によって減少し、その一部は太陽系に取り込まれた。合成された26Al量は理論計算で求めることができ、太陽系最古の隕石形成時(45.67億年前)の26Al量は現在の娘核26Mgの量から求めることができる。本研究では、26Alとチタン同位体を組み合わせることで、超新星爆発放出物の太陽系への混入割合fと、超新星爆発と最古隕石形成年代の時間差∆tを同時に計測した。/Credit:散りゆく大質量星の傍らで太陽系は生まれた—— 超新星爆発の年代をアルミニウム−チタン宇宙核時計で計測——