1つはアルミニウム26と呼ばれるアルミニウムの放射性同位体です。
アルミニウム26は、半減期が約73万年と短いため、現代の地球や若い隕石にはほとんど残っていません。
しかし、太陽系最初期(約46億年前)の隕石には、その娘核種であるマグネシウム26(26Mg)の過剰量という形で痕跡が刻まれています。
これほど大量のアルミニウム26がどうやって太陽系に供給されたのかは、長らく謎とされてきました。
赤色巨星やウォルフ・ライエ星、さらには白色矮星が起こすタイプの超新星爆発など、多様な起源が議論されてきたものの、決定打に欠けていたのです。
もう1つはチタン同位体 (チタン46、チタン50 など) です。
チタンは壊変しない安定同位体ではあるものの、特定の核反応過程(たとえば大質量星の内部や超新星爆発)でしか生成されない“異常”な組成を持つことがあります。
そこで研究者たちは、同じ隕石中のアルミニウム26の痕跡やチタン46やチタン50の状態を調べることで「どのような爆発現象がいつ起き、どの程度の量が太陽系に混ざったか」を一挙に推定できる「アルミニウム–チタン宇宙核時計」と呼ばれる新手法を開発しました。
そして実際に隕石の微量同位体組成を丹念に調べると、「ある地域(小惑星や彗星の母天体)にはアルミニウム26やチタン同位体が多い」、「別の地域には少ない」といった不均一な分布が見えてきました。
これは、太陽系が形づくられるほんの数百万年~数千万年のあいだに、“母なる大質量星”が供給した物質が円盤の一部(主に外側)に偏って混ざったことを示唆しています。
さらに今回の研究では、隕石中に残るアルミニウム26量(実際には崩壊生成物であるマグネシウム26量)と、チタン同位体(チタン46やチタン50など)の偏りに強い相関があることが示されました。
これはアルミニウム26とチタン同位体の“セット”が同じ時期に、大質量星(重力崩壊型超新星)から供給されたことを示唆します。