その一方で、長い長い雨は陸上に新たな支配者を誕生させました。

それが「恐竜」です。

これ以前のパンゲア大陸では、爬虫類のリンコサウルスから単弓類のディキノドンといった小型の四肢動物たちが主な支配者として君臨していました。

恐竜も誕生こそしていましたが、その割合は生物全体の5%ほどで、少数派の種でした。

しかしカーニアン多雨事象により、パンゲア大陸の植物相が激変することになります。

高温乾燥の時代には背の低い草木がまばらに生えた植物相をしていたのですが、降水量が一気にドン!と増えたことで、針葉樹やソテツ類などの背の高い大きな樹木が鬱蒼(うっそう)と繁り始めたのです。

これらの樹木は葉っぱや幹が大きくて丈夫だったせいか、顎の弱いリンコサウルスやディキノドンは硬い植物をしっかり噛めず、消化もできなかったため、どんどん死んでいったのです。

また彼らは背の高い樹木の葉っぱに届かず、満足に食糧にありつくことができませんでした。

しかしその中で頑丈な歯や顎を持っていた恐竜たちはこの植物相にうまく適応することができました。

彼らは後ろ足で垂直に立ち上がることもできたので、背の高い樹木の葉っぱも難なく食べられたのです。

こうして陸上の支配者は一挙に恐竜へと代わり、その後、約6600万年前に巨大隕石が落ちるまで恐竜の時代が続くことになります。

では最後に、カーニアン多雨事象は何が原因で起こったのでしょうか?

なぜ急に雨が降り始めたのか?

それまで高温乾燥していた地球に、なぜ突如として雨が降り始めたのか?

これは長年にわたって研究者たちの議論が続いており、いまだに完全な決着はついていません。

しかし現時点で最も有力な仮説は「火山活動」によるものとされています。

これまでの研究で、三畳紀後期に、パンゲア大陸を取り巻くパンサラッサ海の一部で大規模な火山活動が発生していた証拠が見つかりました。

これらの地質学的な証拠は、その後の大陸移動によって、現在のカナダ西部と日本〜極東ロシアへと移動しています(下図を参照)。

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火山活動が雨季を引き起こした可能性/ Credit: 神戸大学 – 大量絶滅と恐竜の多様化を誘発した三畳紀の「雨の時代」(2020)