その時代の地層には、川で見つかる礫岩や湖に特有の堆積物、沼地の痕跡が密集していたのです。
さらに2000年代初めにはその発見に続いて、アメリカや中国、イタリアでも同じ時代に川や湖、沼地ができていた証拠が続々と発見されました。
これらの証拠は三畳紀の後期に長い長い雨が降り続いて、パンゲア大陸が湿潤な環境になっていたことを物語っていたのです。
このことから約2億3400万年〜2億3200万年前に起きた”雨の時代”が「カーニアン多雨事象(※)」と名付けられました。
(※ カーニアンとは、約2億5190万〜2億130万年前に相当する三畳紀をさらに細かく区分した時代のことで、約2億3400万年〜2億3200万年前にあたります)
つまり、地球にはかつて200万年もの間、雨が断続的に降り続けていた時代が確かにあったのです。
そしてカーニアン多雨事象は自然の生態系を大きく変えて、新たな支配者の誕生を促しました。
雨季による「新たな支配者」の誕生!
高温で乾燥した場所で生き続けるのは、生物にとって困難です。
とはいえ、止まない雨も生物には致命的だったようです。
この時代、カーニアン多雨事象によって大量絶滅が発生したことが明らかになっています。
その最大の被害を受けたのは意外にも海の生き物たちでした。
三畳紀後期に200万年もの雨季が続いたことで、陸地には巨大な川がいくつも形成されましたが、その川を通じて土壌にある大量の栄養素が海へと流入します。
これにより海洋環境の富栄養素化(栄養素が過剰に多くなること)が起こり、プランクトンが大量発生。
そしてプランクトンが激増したことで海中の酸素が大量に消費され、海水の溶存酸素量が激減し、海洋生物たちがどんどん死滅していったのです。
硬骨魚類からアンモナイト、タラトサウルスといった大型の海洋爬虫類までもが絶滅に追い込まれ、この200万年間で35%もの海洋生物が姿を消したとされています。
