以上の研究結果から、サルモネラは小腸で炎症を起こし、アミノ酸の吸収を妨げることによって、大腸にアミノ酸が豊富に存在する状態を作り出し、リジンやオルニチンを脱炭酸してpHを調整し、SCFAの防御機構から逃れながら増殖することが明らかになりました。
つまり、サルモネラは自らの生存を有利にするため、大腸内の栄養環境条件を戦略的に操作していたのです。
この新たな知見により、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患、腸内感染症の治療法あるいは予防法の進展が期待されます。
病原体の感染メカニズムについて研究が進めば、腸内細菌を整えるための食事計画など「腸活」にも応用されるかもしれませんね。
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参考文献
New study shows how salmonella tricks gut defenses to cause infection
https://health.ucdavis.edu/news/headlines/new-study-shows-how-salmonella-tricks-gut-defenses-to-cause-infection/2024/11
元論文
Salmonella virulence factors induce amino acid malabsorption in the ileum to promote ecosystem invasion of the large intestine
https://doi.org/10.1073/pnas.2417232121
ライター
門屋 希実: 大学では遺伝学、鯨類学を専攻。得意なジャンルは生物学ですが、脳科学、心理学などにも興味を持っています。科学のおもしろさをわかりやすくお伝えし、もっと日常に科学を落とし込むことを目指しています。趣味は釣り。クロカジキの横に寝転んで写真を撮ることが夢。
編集者
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。