腸内細菌は、体に良い働きをする「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、状況次第でどちらの働きもする「日和見菌」の3つに分けられ、その割合は健康な日本人ではおよそ2:1:7とされています。
ちなみに、健康食品でお馴染みの乳酸菌やビフィズス菌はどちらも善玉菌の一種です。
健康な状態では、主に善玉菌が食物繊維やオリゴ糖などの吸収されなかった炭水化物を大腸で発酵させて、酢酸、プロピオン酸、酪酸といったSCFAを作ります。
これらのSCFAは弱酸のため、大腸内のpH(酸性=pH7未満、中性=pH7、アルカリ性=pH7超)を低下させて酸性環境を保ち、病原菌が生存しにくいようにしています。
また、SCFAは、酸が水に溶けた時の水素イオン(H+)の放出しやすさを示す酸解離定数(pKa)が約4.7のため、pHが4.7より高くなる(中性に近くなる)ほど水素イオン(H+)を放出しやすくなります。
大腸内は弱酸性環境(pH5.7〜6.2)のため、多くのSCFAが水素イオン(H+)を持った状態(プロトン化)で存在し、簡単に細胞膜を通り抜けられるので細胞外から細胞内に入りやすくなっています。
プロトン化した状態でSCFAがサルモネラなど病原体の細胞内に入ると、細胞質が中性(pH7.2〜7.8)のため、SCFAは水素イオン(H+)を放出し、細胞質内は水素イオン(H+)が増えてpHが低くなり、酸性化します。
すると、酸性化によって細胞の構造や遺伝子にダメージが加わったり、酵素が上手く働かず細胞のエネルギーであるATPの合成に支障をきたすなどして、病原体が増殖できなくなります。
このように、腸内細菌が作ったSCFAに由来する酸の力は病原体への感染を防ぐうえで重要な役割を果たしています。
逆に、病原体はどのような武器を持っているのでしょうか?