サルモネラの場合、サルモネラの細胞内でリジンとオルニチンというアミノ酸を脱炭酸し、カダベリンとプトレッシンという物質を生成し、細胞内の水素イオン(H+)と一緒に細胞外(宿主の大腸内)に排出することでSCFAによる細胞内酸化を抑制していると考えられました。
実際に実験データでサルモネラ感染後にマウスの大腸内でカダベリンとプトレッシンの濃度が上昇していたことから、研究者らはリジンとオルニチンに着目しました。
そこで、マウスの糞を使って腸内環境を再現した培地をpH6.7とpH5.7に調整してSCFAを加え、そこにリジン、オルニチンまたはサルモネラ増殖に関与している物質(L-アスパラギン酸、フマル酸、リンゴ酸、酸素、硝酸、テトラチオネートとエタノールアミンのいずれか)を添加した状態で、通常のサルモネラを培養しました。
すると、pH5.7の酸性環境ではリジンとオルニチンのみでサルモネラの増殖がみられました。
さらに、p H6.7、5.7に調整した培地にSCFAのみ、SCFAとリジンまたはオルニチンを添加し、通常のサルモネラ、リジンの脱炭酸で生成されたカダベリンを排出できないcadBA変異体、オルニチンの脱炭酸で生成されたプトレッシンを排出できないspeF potE変異体を培養しました。
その結果、pH5.7の環境だと、cadBA変異体はリジン添加培地で増殖できず、speF potE変異体はオルニチン添加培地で増殖できませんでした。
つまり、サルモネラがリジンまたはオルニチンの脱炭酸によって、SCFAによる増殖阻害を回避していることが証明されたのです。