これはしばしば「フレームドラッギング(frame dragging)」とも呼ばれ、回転体の重力場がまるで“回転する容器が中の液体をかきまぜる”ように、時間と空間の両方を引きずってしまう現象です。
この効果が十分に強くなると、世界線(物体の時空上の道筋)が過去と未来をループ状に結ぶ「閉じた時間的曲線(CTC)」を形成しうるのです。
イメージとしては4次元世界で球体をしていた粘土を棒状に伸ばしていって、リングを作るイメージに近いでしょう。
棒の端と端の部分が結ばれると、時空の始点が終点が重なります。
より具体的に言えば、2000年の1月1日と2020年の1月1日の時空がループしている場合、2019年12月31日の次の日は再び2000年1月1日になってしまうわけです。
このまま時間に沿って進むと同じタイムラインを何度も体験することになります。
そのためループ状で普通に時間に乗って進んでいくだけで、旅行者は過去と未来に何度も出会うことになります。
現実世界では、高速回転するブラックホールの周辺領域などで、このような奇妙な「閉じた時間的曲線(CTC)」が形成されるのではないかと考えられています。
ループする時空が安定すると、その中の歴史は永遠に循環します。
SFではタイムマシンの一部として、かなりの頻度で「回転する部品」が描かれていますが、回転が時空を過去と繋ぐとするのは理論的にも辻褄が合うのです。
もちろん、これを実現させるには負のエネルギーを持つ物質や膨大なエネルギー量など、現実的には極めて困難な条件を要するとされます。
しかし、一般相対性理論の数式の上では、回転する大質量天体や構造物が空間と時間を強引にねじ曲げ、同じ時刻に戻ってしまうループを生成するシナリオは排除されていません。
こうした研究は「通過可能なワームホール」の理論とも結びつき、活発な研究分野となっています。
ただ困ったことに、時間と空間を制御して過去と繋げることができたとしても、別の問題が起こります。