「監督兼GM」という肩書で成功した例はJ史上、未だにない。2016シーズン名古屋グランパスの小倉隆史監督、2021シーズンカマタマーレ讃岐の上野山信行監督、そして昨2024シーズンいわてグルージャ盛岡の神野卓哉監督が挙げられる。このジンクスに挑もうとしているのが、昨2024シーズン、たった1年でJ2から再降格した鹿児島ユナイテッドの新指揮官、相馬直樹監督だ。
日本代表の左サイドバックとして1998年のフランスW杯に出場するなど選手としての実績は申し分ないが、監督歴は挫折の連続だった相馬監督。現役最後のクラブである川崎フロンターレの下部組織で指導者キャリアをスタートさせ、2010シーズン、当時JFLの町田ゼルビア監督に就任し3位に入ったが、J2昇格基準を満たせず、J昇格できずに退任した。
2011シーズンには川崎の監督に就任するも、クラブのJ1昇格以降初となる2桁順位の11位に終わり、2012シーズンも低迷し途中解任。2014シーズンからJ3の町田の監督に復帰し、2015シーズンには2位で大分トリニータとの入れ替え戦の末、J2昇格を果たす。通算7シーズンにもわたり町田の監督を務め、これは同クラブの最長記録だ。これが相馬氏が監督として、もっとも輝いた時期だった。
2021シーズンには古巣の鹿島アントラーズ、2022シーズンには大宮アルディージャの監督に就任するが、いずれも前任者の解任によるもの。大宮に至っては2023シーズン、クラブ初のJ3降格という憂き目に遭ってしまった。
鹿児島の上層部はどういった基準で監督選びをしているのか疑問が残る。前任の浅野哲也前監督時についても、6年ものブランクがあり、セミリタイア状態にあった同氏を呼び戻した上、J3に降格してしまっている。
実績の乏しい指揮官に監督兼GMという重責を背負わせることはリスクしかないが、このオファーを受けた相馬監督の覚悟は相当なものだ。鹿児島は23人もの選手を放出や引退により失い、新加入選手は20代前半の若手が中心だ。FWアンジェロッティ、MFジョアオ、DFヘナンのブラジル人3選手の活躍がチームの浮沈のカギを握るだろう。
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