新たな生命の循環がなくなってしまった楽園はもはや地獄そのものでした。
マウスは日に日に弱っていき、個体数も激減して、1400日を過ぎた頃にはオスメス合わせて100匹ちょっとしかいない状況に陥っています。
また興味深いことに、この時点で生き残っていたマウスはAランクやBランクの勝ち組マウスではなく、最下位Eランクの引きこもりマウスばかりでした。
このような結果になった原因は、引きこもりマウスが他の個体との争いを避けて孤立した生活を送っていたことで、ストレスや競争の影響を最小限に抑えられたためと考えられます。
この実験場では、マウスたちは食べ物の心配はする必要がなかったため、社会的な接触を極力避けたマウスがこの社会的に混乱した状況の中で生存率を高めたのです。
実験開始から1800日が近づいてきたある日、楽園にいた最後のオスが死亡。
これで楽園マウスの絶滅は決定的となったため、カルフーンはユニバース25を終了して、生き残ったメスを救出しました。
こうしたマウスの激減と絶滅までの期間を「フェーズ4:終末期」と呼んでいます。
つまり、飢えも病気も天敵もいない楽園的な世界を作ったとしても、生活に利用できる空間が限定的だと最終的に生物は絶滅の道を辿ってしまうのです。
ちなみにカルフーンはそれ以前の27年間に同様の実験を24回実施しており、今回は25回目でした(これが「ユニバース25」という名称の由来)。
そしていずれの実験でもマウスたちは最後に絶滅に至っていました。
このようなマウスたちの運命の流れを見ていると、私たち人類が辿っている道筋にとても似ていることに気づかないでしょうか?
楽園に放たれたマウスはホモ・サピエンスが世界に広がり始めた原始時代。
マウスの増加と社会の形成は人類の都市化。マウスのランク付けも、人間社会におけるカースト制度と瓜二つ。