原因はカースト制度で生じた「格差」にありました。

旦那が勝ち組のメスは広々としたスペースで、安全に余裕を持って子供を出産し育てることができています。

そのため、新たに生まれた子の死亡率も約50%と比較的低い状態を保てていました。

ところが旦那が負け組のメスでは、居住スペースに他のマウスがごった返しており、争いも頻繁に発生するので、安心して子育てをすることができません。

また旦那が喧嘩に弱かったり、家族の利益を守ろうとしないので、メス自らが闘うようになり、次第に凶暴化していったのです。

すると奇妙なことに、そのメスたちのイライラの矛先はわが子にまで向けられるようになりました。

その結果、団地住まいのカーストでは新生児の死亡率が90%以上と、ほとんどが死んでいたのです。

加えて、子供たちが団地住まいで生き残ったとしても母親に虐待を受けるので、若いうちから家出し、不安定な状態で生きていかなければなりませんでした。

最終的に子供たちがたどり着くのは、最下位ランクの引きこもりマウスだったのです。

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マウスの絶滅へ/ Credit: canva

そしてついにXデーはやってきます。

実験開始から560日が経過し、マウスの総数が2200匹に達した頃、マウスの数がまったく増えなくなってしまったのです。

カルフーンは子供の死亡率が急上昇し、繁殖が止まったこの期間を「フェーズ3:停滞期」と呼んでいます。

その後、楽園はどこもかしこも不穏な空気に支配され、勝ち組マウスたちもその影響を被り、ついに楽園全体で子供の死亡率が100%に達しました。

ここには、マウスたちの社会全体の混乱とストレスが関係していると考えられます。社会全体での協力関係が失われたことで、勝ち組マウスも子育ての成功率が急激に低下していったのです。

さらに妊娠するマウスすら居なくなってしまいます。

実験開始から1330日が経過する頃には、楽園マウスの平均年齢は人間でいうところの77歳と、超高齢社会になっていたのです。