稲村後援会による公選法違反による告発の対象とされているのは、稲村氏に関して「外国人参政権を進めている」「県庁建て替えに1千億円をかけようとしている」などの「虚偽事項」がSNSで投稿され拡散されたというものだ。
選挙期間中の街頭演説で行われた同様の発言が、虚偽事項公表罪に当たるのではないかがSNS上で問題にされている。そのうちの一つが「NHK党」の斎藤健一郎参議院議員(以下、「斎藤議員」)の街頭演説での以下の発言だ。
友達に「斎藤候補以外の人になったら、稲村候補になったら1000億円かけて県庁舎を建て直すって言ってるよ。それでもよいのなら他の候補でもいいのかもしれないけど、それではダメだというのなら斉藤候補でいいんじゃない」という話をシンプルにしてあげてください。
稲村後援会の告発の内容からすると、稲村氏は1000億円かけて県庁舎を建て直す方針を示しておらず、「稲村候補が1000億円かけて県庁舎を建て直す方針を示している」と発言したとすれば、それが虚偽であることは明らかであろう。
しかし、斎藤議員の発言については、2項の虚偽事項公表罪の該当性には問題がある。まず、「稲村候補に関する虚偽事項」と言えるのかどうかだ。「言ってるよ。」というのが、「稲村候補が言っている」という意味であれば虚偽と言えるが、誰が言っているのかははっきりしない。誰かのいい加減な発言、あるいは予測であれば、稲村候補についての虚偽事項とは言いにくい。
そして、より根本的な問題は、「稲村候補を落選させる目的」と言えるかどうかだ。
演説の中では斎藤候補への投票を呼び掛けており、「斎藤候補に当選を得させる目的」の演説の中で、対立候補である稲村候補が「1000億円かけて県庁舎を建て直す方針」であるかのように発言しており、直接的に「稲村候補の落選を目的とする発言」と言えるかどうかは微妙だ。