パラレルワールドへの扉を開き「みんな大好きな多世界解釈はいま本当に危機にあるのか?」を徹底解説します。
目次
- 量子力学の基礎をざっくり理解する
- 多世界解釈(MWI)とは何か
- なぜ多世界解釈は研究者にも「人気」なのか
- 多世界解釈と保存則
- 多世界解釈の危機
- まとめ「多世界解釈の危機は発展の痛み」
量子力学の基礎をざっくり理解する
古典物理学(主に中学や高校で習う古い物理学)では、リンゴが木から落ちる理由(重力)や、台車にかかる力と加速の関係(運動方程式)など、直感的に理解しやすい法則が多く見られます。
ところが、量子世界では測定や観測こそが系の状態を大きく左右する――むしろ、測定を行うことで「初めて」粒子の性質が定まる、という奇妙な性質が見られます。
古典物理学では「人間が観測をしようがしまいが、結果は変らない」とされていますが、量子力学の世界では人間が行う観測そのものが物理現象の中に組み込まれ、現象そのものを変質させてしまうのです。
そのため観測によって起こる問題は「観測問題」と呼ばれており、多世界解釈というアイディアを知るための第一歩となります。
ここでは、量子力学の基本原理と、そこから生まれた観測問題の概要を紹介します。
量子力学とは何か
量子力学では、電子や光子(光の粒子)などの極めて小さな存在を扱います。
古典物理学の視点に立てば、「電子はボールのような粒子で、光は波だ」という単純なイメージを抱きがちです。
しかし、実際には電子は波の性質を示し、光は粒子の性質を示すことがある、という驚くべき事実が明らかになりました。
たとえば有名な「二重スリット実験」では、1個ずつの電子を2つのスリットに射出すると、1個の電子が同時に2つのスリットを通過し、干渉パターン(しま模様)を形成するという不思議な実験結果が得られます。
つまり、発射するときには1個、観測されたときも1個なのに、その1個の電子が2つの穴(スリット)を同時に通過するのです。