今後の再発防止に向けて対策について

 今回の経過報告は事実関係の詳細を主眼としており、再発防止策については、あまり踏み込んでいない。一方、国土交通省航空局は有識者による対策検討委員会を立ち上げ、対策を立案しすでに一部の対策に着手している。

・国交省の「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」と再発防止策(主なもの)

【滑走路への誤侵入防止対策】  

(1)滑走路状態表示灯(RWSL)の導入拡大(羽田空港C滑走路)

・管制指示と独立して機能する滑走路状態表示灯(RWSL:Runway Status Lights)を主要空港(新千歳、成田、羽田、中部、大阪、関西、福岡、那覇空港)の同一滑走路で離着陸することが想定される全ての滑走路及び誘導路に導入予定。

・羽田空港C滑走路については、2024年10月1日より一部誘導路の工事を先行的に開始。2027年度末以降、2029年度までに順次供用開始予定。

羽田衝突事故・経過報告への疑問…身内の海保庁と管制部への調査に「遠慮」か
(画像=図.RWSLの機能(出典:航空局),『Business Journal』より 引用)

(2)パイロットに対するCRM(Crew Resource Management)訓練の義務付け  注:CRM訓練:パイロット間のコミュニケーション等を向上させヒューマンエラーを防止するための訓練(座学、ロールプレイ等)

・自家用含む全てのパイロットに対して、管制圏において離着陸を行う場合、国土交通大臣の登録を受けた者等が行うCRM訓練の修了を義務付けるべく、制度的措置を検討中。

・定期航空運送事業者に対しては、国際標準に準拠し、2000年度よりCRM訓練義務化済み。

・効果的な訓練の内容、あり方等を検討するため、海外事例調査等を実施予定。

【管制官に対する誤侵入注意喚起機能の強化】

(1)滑走路占有監視支援機能(滑走路誤進入に係る管制官に対する注意喚起システム)を強化中。

・第1ステップとして、2024年10月31日より注意喚起音を追加済み。
・第2ステップとして、2025年度中に、さらに切迫した状況で発動する警報表示・警報音を追加予定。2024年10月よりシステム改修関連作業に着手。

羽田衝突事故・経過報告への疑問…身内の海保庁と管制部への調査に「遠慮」か
(画像=誤侵入注意喚起機能の強化(出典:航空局),『Business Journal』より 引用)

 なお、1月2日付産経新聞の報道によれば、航空局は、2025年度以降に、上記の警報表示・警報音が発動された場合は、管制官の判断なしに自動でパイロットに着陸のやり直し(着陸復行)を指示する方向で検討中という。

【離着陸補佐の管制官(離着陸調整担当)を新たに追加配置 (主要空港)】

・報告書でも明らかなように、担当タワー管制官は1人で5機の管制を受け持ち、外に2機を監視対象とするなど、ワークロード上、手一杯となっており、海保機の異常に気付いた東京ターミナル管制所の航空管制官の緊急の問い合わせにも理解して対応することができなかった。しかし、これは担当管制官個人の問題というより、組織上の問題というべきであろう。

・対策として、国土交通省は25年度より主要空港(成田、羽田、中部、大阪、関西、福岡、那覇空港 ※注)に離着陸調整担当の管制官を配置し、航空機の離着陸に係る監視体制の更なる強化を図る。※注:新千歳空港では、防衛省において独自の監視体制を導入済み

・離着陸調整担当は地上管制担当や東京ターミナル管制所のレーダー担当航空管制官との調整を行うことで、飛行場管制担当はパイロットとの交信及び航空機の監視に専念できる。

羽田衝突事故・経過報告への疑問…身内の海保庁と管制部への調査に「遠慮」か
(画像=離着陸補佐の管制官(離着陸調整担当)の追加配置(出典:航空局),『Business Journal』より 引用)