これには「貧弱な教育」(poor education)、「就学率の低さ」(low enrollment)そして「初等・中等教育の質の低さ」(poor quality of the primary and secondary school)などが理由とされた(同上:19)。

そのために、「インドの台頭は人的資源の脆弱性ゆえに制約される」(同上:19)と予想した。要は人口の量ではなく、「人的資源の脆弱性」(human resource vulnerabilities)という質的な問題から、世界一の人口大国になったとしても、その影響力は中国を越えることはないという診断が出されている(同上:19)。

中国、ロシア、北朝鮮、イランの人口動態からの判断

エバースタットは、これまでアメリカ主導の国際秩序に挑戦してきた中国、ロシア、北朝鮮、イランでも、出生率の低下を筆頭にした理由に加えて、とりわけロシアでは公衆衛生と「知識の生産」(knowledge production)がうまくいかない問題状況にあるように見えることから、「流れが好転する兆しがない」と結論した(同上:20)。

また、中国でも出生率の低下と大家族主義の崩壊で、主要な社会的セーフティネットが壊れるため、「想像を絶する新たな社会保障負担」(unimagined new social welfare burdens)が必要となるから、その「国際的野望にも資金面での制約が生じる」とした(同上:20)。

アメリカの一人勝ち

では、アメリカはどうなのか。

エバースタットによれば、人種対立による国内の緊張はあるが、世界的にみても出生率が高く、2050年まではスキルのある移民による豊かな労働力にも恵まれて、高齢化の進行も緩やかなので、アメリカの優位が見込めるとした(同上:20-21)。

「二つの未知の要因」への対処

しかし、移民も含めて人口変動や人口減少には、「二つの未知の要因が特に際立っている」(同上:21)。