さらに具体的には、「労働市場の柔軟性」を高めるために、「参入障壁を減らし」(reducing barriers to entry)、「活力を増進するための配置転換や繰り返しの転職を歓迎し」(welcoming the job turnover and churn that boost dynamism)、年齢差別をなくすことがあげられたが、それらにもまして「徐々に縮減する労働力の生産性の増強が急務とされた」(the urgency of increasing the productivity of a dwindling labor force)。

「移民」政策は一般化できない

さらにエバースタットは、「人口減少社会の兆しの中でも、移民の重要性が現在以上に高まる」(In the shadow of depopulation, immigration will matter even more than it does today.)から、「現実的な移民戦略」として労働力、税収基盤、消費の強化を打ち出し、移民を出した国でも送金による利益の確保をあげている」とのべる(同上:18-19)。

しかしこの「移民」については、各国の事情が異なることに配慮しながら、各国政府の「大きな課題」(a major task)であり、最終的には「努力する価値がある」(one well worth the effort)と主張を和らげている。日本でも同じであろう。

地政学(geopolitics)からの展望

そして最終的にはForeign Affairs Reportらしく、地政学から世界的な「人口減少」がまとめられた。その理由は「人口減少」が「既存の世界秩序」を変化させ、緊張を高めるからである。

その素材にはアフリカ、インド、中国、ロシア、北朝鮮そしてアメリカが具体的に取りあげられた。このうちアフリカとインドでは2050年までくらいは「人口増大」が続くと予想されているが、いずれも「基本的スキル」(basic skills)を身につけていないことがネックになるとのべる(同上:19)。