ただし50年先の時代でも、日本では毎年70万人前後の令和生まれの子どもたちの大半は健在であり、社会システムの中核を担っているはずである。だから「消滅」は大げさな表現だと思われるが、日本も含めて世界のあらゆる地域で、15歳から49歳までの集団が縮減してしまうのは事実である。

したがって先進国やGNだけではなく、ラテンアメリカ、インド、東南アジア、アフリカなどを含む全世界で、「消滅」の前に「高齢社会が常態化する」(同上:14)はあながち的外れではないと私も考える。

世界各国の政策立案者はその事態に備えていない

にもかかわらず、世界各国の政策立案者はその事態に備えていない。エバースタットの原文では‘Policymakers are not ready for the coming demographic order.’という一文が小見出しになっているが、日本語訳ではなぜか省略されている。

もちろん「政策立案者は到来が予想される人口秩序への用意をしていない」というこの内容は、日本を含めたかなりの国々では当てはまらない。なぜなら日本でも、「高齢社会対策大綱」や「子ども未来戦略」など「人口ビジョン」は繰り返し策定されてきたからである。

「老化の波」(wave of senescence)

「少子化する高齢社会」現象が顕著になってきた他の国々でも、いろいろと策定された「計画」が実行されているが、そのトレンドを阻止できないままで推移してきたというのが先進国の実状であろう。その結果、「老化の波」が世界中を覆いつくす(同上:15)。

ただし、ここで注目したいのは‘senescence’が使われている点である。これは周知の‘age wave’とは異なり、もっと深刻な老齢期を意味する。なぜなら、この‘wave of senescence’は「強い老化の波」を表現していて、それは植物では「完全な成熟後の枯死に至る老化期」(『リーダーズ英和辞典』研究社)を表わすからである。

「枯死に至る老化の波」(wave of senescence)の結果