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年明けYahoo!トップに掲載された記事は、おそらく20歳前後の「娘」が年末から発熱と関節痛、少し良くなったのでおせちを食べ入浴したら悪化し、病院に電話120回以上119も何度もかけて、結果はインフルエンザ、というものだった。筆者は発熱外来にも携わる外来看護師だが、率直に言って「医療の不適切利用」である。
発症は30日という。その時点なら各地医師会の休日診療所を受診すれば、迅速検査ですぐ診断処方できたはずである。実際ちょっと発熱した程度、軽い風邪症状でも発熱外来に「押し寄せてくる」。過剰受診と想いつつ、確かにインフルエンザやコロナも多い。結果的には先手必勝で軽症化する。まずここで判断ミスである。
当該記事の筆者は報道関係者とのことなので、インフルエンザが大流行していること程度は知っていたはず、コロナも発生しているが、若く健康なら自然治癒することも知っていて当然である。ならば正月明けまで自宅静養させるべきだった。ところが「保存食」であるおせちを好きに食べさせ、体調不良なのに入浴させた。全く療養になっていない。
挙句病院に120回以上電話。規模によるが病院の外線回線は数回線しかない。オペレーターは一人か、事務員や当直医療者が対応する。電話回線を輻輳させ、医療関係者の業務を妨害したことになる。さらには救急車まで出動させ、そのせいで本来救命すべき心筋梗塞や脳梗塞その他「一刻を争う人」の医療を妨害し誰かの命を危機に晒したことになる。まさに医療の不適切利用だ。
ちなみに当該記事の筆者がどうか不明だが、多くの自治体は「ひとり親医療」で医療費無料や低額にしている。ところがこれが「ゼロ価格効果」として医療の不適切利用を増長しているのではという調査研究もある。
救急医療崩壊、救急車の不適切利用が問題視されてもう20年近い。救急搬送者の半数以上が「必要性が無い軽症者」で、中にはタクシー代わりや待ちたくないからと呼ぶモラルハザードも多いという。そのため救急車の出動回数は増加一方、到着時間はどんどん遅くなっている。本当に救命が必要な人を、助けに行けなくなっている。