かかりつけ医制の議論があるが、医師会の反発もあり進まない。高齢になると複数の専門性ある傷病を併発もするが、その人にとって一番大きな問題となる傷病は定まる。誰か一人に専属とせずとも、居住地域内開業医または小規模病院でのプライマリケア(初期医療)を義務づければ、問題は随分解決するのではないか。介護保険を利用するには、意見書を記載する主治医を求められるから、それでも良い。

筆者は北里大学出身だが、学生時代こんな「笑い話」があった。「相模原の人は市民病院が無いから北里が主治医だという人が多い。けど大学病院の外来医師は若手で2年もすれば交替するから、医師は自分が主治医だなんて思ってない」。部長あるいは講師クラス以上のベテランでなければ、大学病院や大病院で通常診療する医師は「若手」である。一方開業医の多くはベテラン専門医である。どちらの方が安心できるだろうか。

医療費削減のためでもあるが、セルフメディケーションが勧められている。正直、インフルエンザでも新型コロナでも、元来健康な現役世代なら、具合悪いのに病院受診し長々待って体力消耗するより、自宅で寝て好きなもの食べていた方がはるかに楽で自然回復する。

抗ウイルス薬は一日程度回復が早くなるかどうか、程度の効果でコスパは悪い。高齢者などハイリスク者や家族が居て、家族内感染リスクがあれば処方するが、そうでなければ市販薬と大差ない解熱剤と咳止め程度の処方である。そのために救急病院に120回以上電話し輻輳させ職員を振り回し挙句に救急車など「ヤメテクダサイ」というのが現場医療職の共通の本音だと想う。

一昨年筆者は介護職減少について投稿したが、昨年は地方各地で看護学校閉校の報道が相次いだ。少子化とはいえ、看護師志望者も減少している。医療も介護も、このままでは受けられなくなりかねないのだ。そうなってからでは遅い。

医療の利用の適正化を市民が自主的にしないなら、制度的規制を考えるべきだ。そして市民は病院、医療はいつでも気軽に「消費」するものではないし絶対治るわけでもない、それでも大切に護るべき有限の資源と認識すべきだ。