この数に決まった背景のもう1つには、人類の進化史のほぼ99%を占めるといわれる狩猟採取時代には、実際に集団規模が150~200人を大きく超えることはなかったのではないかという推測があります。
狩猟採取の生活では、あまりに大きな集団を維持するには食料を確保するのも移動するのも不利になるため、一つの群れが150~200人程度に落ち着いたと考えられるのです。
このように考えると、ダンバー数が示す“脳の限界”は、人類が長い歴史の中で培ってきた社会的な認知能力と深く結びついているといえます。
150人以上の友達を持つことができない?「ダンバー数」とは
また、ダンバー自身は150~200人という目安の周囲に、さらに親密度ごとに分かれた複数の階層があると主張しています。
たとえば、親密に連絡を取り合うのは5人程度(家族・親友クラス)、少し距離があるが深い関係を継続できるのは15人程度、なんとか顔を覚え、時々連絡をとるのは50人程度、名前と顔が一致し、ある程度の情報を共有できるのは150人程度、その先の500人・1500人という段階には「知人」「名前だけ知っている」などの薄い層が続く……といった具合に、脳の処理能力によってレベル別にグループが区切られている、と言われます。
このダンバー数に関してはSNS上の関係も当てはまっており、人間がSNS上で活発な交流を維持できる範囲もまた150~200人に限られていることが報告されています。
もちろん数値の限界値には個人差があります。
しかしどんなにコミュ力に自信がある人でも「親密に連絡を取り合う1万人の親友」や「性格を完全に把握できる10万人の友達」を持つことはできません。
たとえ時間が無限にあったとしても、脳の能力的に不可能なのです。
さて、ここまでは人間の脳が“噂話”や“他者評価”を最優先する仕組みを持つに至った背景を見てきました。
仲間殺しから逃れるため、そして周囲と“噂”を介して連携するため――その進化が脳のデフォルト機能を形作っているのです。