SNSがもたらす情報革命は、確かに多くの利点と社会的進歩を約束します。
しかし、脳の想定を超えた巨大なネットワークが、承認欲求をさらに増幅し、攻撃性を剝き出しにする可能性をはらんでいることを私たちは自覚する必要があります。
最終的に私たちが目指すのは、脳が本来もつ原始的な防衛反応を理解し、それをうまく飼い慣らす術を身につける――それこそが、現代社会を生きる上で求められる新たな知恵なのかもしれません。
また社会的ポジションと脳の混乱は、人間のSNS上での行動を解釈するためのマスターキーになる可能性があると言えます。
さて次のページでは今回の話を1つのSF風の物語にまとめてみました。
時間があったなら、ぜひ楽しんでください。
承認欲求を知らない神様の物語
はるか太古。
神様は大宇宙の片隅にある、地球によく似た惑星を造り出した。
空には二つの小さな月があり、豊かな海と陸地がその星を潤す。
神様は愛情を込めて、そこにさまざまな生物を生み出した。
年月が流れ、進化の果てに知的生命体が誕生する。
彼らは自らを「ベータ」と呼んだ。毛皮をまとい、四肢で大地を駆け、やがて道具をつくり、集団で狩りをするようになった。
ベータたちは初め原始的な狩猟採集生活を営んでいた。
肉食動物のような鋭い牙こそ持たないが、互いを攻撃することは日常茶飯事。
彼らの大きな死因の一つが「仲間の攻撃による殺害」だった。
人間の歴史で言われるように、死亡理由の15%が仲間同士の衝突に起因していたのである。
「我が子を奪われた復讐だ」
「おまえの獲物を横取りしているのを見た」
「違う、これは俺たちの狩り場だ!」
ちょっとした揉め事から、たやすく血を見る事態へと発展する。
そこでベータたちは集団を小規模に保とうとした。1グループにつき150〜200匹ほどで構成し、地形に合わせて狩りや採集を行う。