しかし、「地獄の門」は、観光地となって終わりではありませんでした。

トルクメニスタンは、旧ソ連だった国の中でもロシアに次ぐ豊富な天然ガス埋蔵量を誇っています。大きなガス田のほか、小規模のガス田は無数にあるという、天然ガスの上に住んでいるような国。

つまり、トルクメニスタンは天然ガス・石油の出る資源大国なのです。

流れ出るメタンガスに放たれた火が燃える「地獄の門」。研究者たちは、炎は数週間もすれば消えると考えていました。

しかし、消えなかったのです。

これは予期せぬ出来事でした。流れ出れば人体に害があります。そして天然ガスは外貨獲得の貴重な財源でもあります。50年もただ燃やし続けるのはもったいない話です。

そこで2022年、ベルディムハメドフは「地獄の門」を閉じるよう大統領令を発令。「カラクムの輝き」は観光地ではなくなりました。

メタンとはどのような物質なのか

実はメタンは今、地球温暖化にとって二酸化炭素よりも温室効果のあるガスとして有名になってしまっています。

家畜として飼育される牛のげっぷにも含まれる、いや、水田からも放出されているなどと取り沙汰されるようになりましたが、「地獄の門」から吹き上がるメタンは、大昔の生物が形を変えた天然ガスの一種です。

ではなぜ二酸化炭素削減が叫ばれるこの時代に、天然ガスが注目されているのでしょうか。

経済産業省資源エネルギー庁に、電気事業者発電電力量を示すページ(電気事業者の発電電力量)があります。(電力調査統計

統計にある2024年6月分電気事業者の発電電力量を見てみましょう。

火力 415.8億 kWh

水力(揚水式含む) 70.9億 kWh

原子力 72.6億 kWh

その他

二酸化炭素排出量削減が急務の中、日本では火力発電による発電量が一番多くなっています。この時代への逆行は何でしょうか。

それは発電における化石燃料の持つパワーが関係しています。