そのうえルークは冒険の旅に出るまでに、うだうだ悩む。「ぼくは農場を継がないといけない。宇宙港までは送るから後は勝手にしてくれ」
ルパンは違う。指輪の持ち主が誰なのか悟った瞬間から目の色が変わる。
立体映像録画もロボットも老賢者も使わず、指輪ひとつで「SW」と同じ物語が進んでいく。
この指輪がルパンの手にわたるようにするために、このカーチェイスが設計されているのに気づけるだろうか?
ルパンが車に乗り移る。
崖から墜落する。
ルパン失神。
介抱せねばと行動する姫様。 手袋を手ぬぐい代わりにすればいい…そう考えて、脱ぎ出す。
このとき、指輪が手袋に脱げ落ちている。
姫様は連れ去られる。
手袋が残され、指輪がルパンの手に転がり落ちる。
こうしてドラマが走り出す。
こう物語が展開するよう、ルパン&次元の自動車は、映画の頭でパンクするのだ。
カーチェイスになって、
こうなって、
こうなって、
こうなって、
救出劇になっていく。
宮崎によるSWへの批評ともいえる。「ルーカスなんてたいしたことない。俺ならもっと面白くしてみせるわ!」
若き宮崎は「スター・ウォーズ」をこうやって分析した「SW」冒頭を振り返ってみよう。姫の宇宙船を追いかけてくる、帝国軍の戦艦。♪でーんででででーん、でんでんででででーん♪
姫様(の乗っている船)が悪者に追っかけられている。
しかし、よく考えてみてほしい。この時点では、逃げるこの船にプリンセスがお乗りとは、観客にはわからない(いちおうOPの前説で姫様の存在は説明されているわけだが)。
ここで初登場。しかし何者かはわからない。どうやら女性らしいとわかるのみ。
少し顔が映る。若い女性。
連行される。この時のやり取りから、観客の私たちは理解する。ああ、この船はこの娘を護衛するための船で、それをわるもの達が追い回していたのだな、と。