しかし、その若き才能に目を付けたのは、2008年にUAEの投資会社アブダビ・ユナイテッド・グループ・フォー・ディベロップメント・アンド・インベストメントが2億5,000万ユーロ(約321億7,400万円)で買収し、マンチェスターの1地方クラブから同都市のメガクラブ、マンチェスター・ユナイテッドを凌ぐビッグクラブとなっていくマンチェスター・シティだった。

世界有数のスターを買い漁り、「モノになれば儲けもの」とばかりに芽が出そうな10代の若手を世界中から引き抜き、下部組織あるいは提携するクラブへのレンタル移籍で経験を積ませるその手法には、他クラブも眉をひそめ、FIFAからは「18歳未満の国外選手の獲得禁止」の規則に抵触するとして調査の対象にもなった。

これには、日本代表DF板倉滉も当てはまるが、板倉はレンタル先のフローニンゲン(2019/21)、シャルケ(2021/22)での活躍によって、現在の所属先であるボルシア・メンヒェングラートバッハ移籍の際にシティに500万ユーロ(約8億円)の移籍金を残した、稀ともいえる大成功例だ。

一方の食野は、いずれもポルトガル1部のリオ・アヴェ(2020/21)、エストリル・プライア(2021/22)にレンタルされるが、通算29試合4得点と期待外れに終わる。当然ながら、シティの戦力はおろか、“売り物”にすらなれずに帰国を余儀なくされる。

当初は東京五輪でメダル獲得を目指すU-24日本代表に加わっていたが、ポルトガルで目立った活躍が出来ず徐々に序列を落としていき、五輪出場メンバーから落選するという挫折を味わうことになる。

2022シーズン途中にG大阪に完全移籍で3年ぶりの古巣復帰した食野。しかし「浪速のメッシ」とも呼ばれた鋭いドリブルはすっかり影を潜め、今2024シーズンはJ1リーグ戦11試合出場で無得点に終わっている。