合わない人同士のことをよく「水と油」という、あれです。
この水と油の境目を「界面」と呼び、境界面をなるべく小さく、安定させようとする「界面張力」が働いています。
この界面張力の働きを弱めて食品の水と油が混ざり合うことを「乳化」といい、界面張力の働きを弱めて水と油が混ざるようにする物質は「乳化剤」といいます。
マヨネーズは原料の卵の卵黄に、乳化剤の働きをするレシチンが含まれているため、酢と油がきれいに混ざり、トロリとしたクリーム状になっています。
食品中で水と油が乳化している時、水の中に油が粒子となっている場合を水中油型=O/W型(Oil in Water)で、マヨネーズがこれです。反対に油の中に水が粒子となっている場合を油中水型=W/O型(Water in Oil)と呼びます。
ここで天ぷらの衣について思い出してみましょう。天ぷらの衣からは、水分がなるべく早く抜けるほうがサクサク感を持つ天ぷらになることがわかりました。
衣の中の水分を一部マヨネーズに置き換えることで起きることは以下のようになります。
・マヨネーズの中の酸が衣の中でのグルテンの生成を抑える
・乳化された植物油が衣に分散→衣の中の水分を減らしている
グルテン生成を抑え、衣の水分を減らすのがサクサク天ぷらのキモです。
衣に小麦粉は必要です。でんぷんだけだと食材に衣がつきにくいだけでなく、粘度が極端に低いため衣が薄くなってしまい、天ぷららしさのない、から揚げのような料理になってしまうからです。
そこでグルテンの少ない薄力粉を使いながらグルテンの生成は抑えたいので、小麦粉の量の一部をでんぷんに置き換えます。
論文『天ぷらの衣のフライ特性に及ぼす澱粉の影響』によれば、水を160%、揚げ油の温度を170℃とした場合、衣からの水分飛散率を見た場合、トウモロコシでんぷんは70秒で水分飛散率が80%に達しています。