こうした衣の材料の調整や、油の温度揚げる時間などを総合して調理するのが「匠の技」というわけです。

市販の天ぷら粉は、こうした匠の技にできるだけ近づけるよう食材を調合しています。

天ぷら粉の中にはベーキングパウダーを含むものもあります。

これはベーキングパウダーが水分と出会って加熱されると二酸化炭素の気泡を生じることから、衣にサクサク感だけでなく、ややふっくらした感じを出すために添加されているものです。

サクサク感をメインにしたいなら、加えなくてもいいかもしれません。ここは好みの問題といえるでしょう。

市販の天ぷら粉を使っても、揚げた後で時間とともに天ぷらがべちゃっとしてしまうようなら、揚げ油の温度や揚げる時間を見直す必要があります。

また、一度にたくさんのタネを油に入れてしまうと、適温だったはずの油の温度が一気に下がり衣に水分を多く残す原因になってしまいます。

天ぷら屋さんでは、揚げ油に一度にたくさんのタネは入れません。少ないタネをじっくり観察しながら揚げているのです。

家でサクサクの天ぷらを作るためのレシピと裏技

ここまで、天ぷらをサクサクにするためのポイントを見てきました。

ひとつはグルテンを含む食材を減らすこと、次にグルテンの生成を抑えること。さらに、衣の水分をなるべく早く外へ出してしまうことです。

ここでグルテン対策と水分対策の両方を解決してくれる食材をひとつ挙げます。

マヨネーズです。

マヨネーズは塩味などをつけた卵と酢を油で乳化させたソースの一種です。酢と油は軽く混ぜても分離してしまますが、マヨネーズは分離せず、トロリと柔らかいクリーム状になっています。

これは、酢と混ぜ合わせた卵に、激しく拡販しながら少しずつ油を加えていくことで「乳化」させているため、分離しないのです。

すべての分子には分子間力という、互いに引き合う力が働いていますが、水と油の分子は結びつきにくく、水と油が接していると、水は水、油は油の分子と強く引き合うため、混ざり合いにくくなっています。