トランプ陣営の日米同盟の重視も明快である。AFPIの政策文書では「米日同盟はインド太平洋でのアメリカの関与にとって礎石(Cornerstone) である」と明記している。そのうえに「日本との同盟はグローバルにみてもトップの優先事項だ」と強調していた。

第6は北朝鮮への軍事がらみの圧力である。

バイデン政権の対アジア政策の特徴の1つは北朝鮮の核兵器開発や軍事挑発に対して、ほとんど何もしないことだった。トランプ前大統領が金正恩総書記に迫った「CVID」と略される完全非核化をプッシュする動きがなかった。その現実はオバマ政権時代の北朝鮮に対する「戦略的忍耐」策と変わらなくみえた。

しかし次期トランプ政権では第1次時代の政策の継続、そして強化がすでに強調されている。この政策の中枢にはAFPIで前政権の安全保障政策形成の要にあったフレッド・フライツ氏が位置している。フライツ氏は歴代政権のホワイトハウスやCIA(中央情報局)にあって北朝鮮問題を長年、担当し、北朝鮮の核問題と取り組んできた。また日本人の拉致問題解決にも多様な協力をしてきた人物でもある。

そして第7は孤立主義を避けるという傾向である。

次期トランプ政権は対外介入では選別的となるが、決して孤立主義にはならない点をみずから強調してきた。AFPIの発表政策でも次期政権の対外安全保障のアプローチは「単独ではない(Not Alone)」と、冒頭で明記していた。

この姿勢はトランプ氏が次期政権の国際戦略の主要メンバーとしてすでにウクライナ・ロシア問題の特使や中東問題の特使の任命を公表したことで裏づけられる。

トランプ氏は前政権でも中東和平追求の一環として「アブラハム合意」を推進した。アラブ首長国連合やバーレーンなどアラブ側諸国とイスラエルの国交を樹立させたこの合意は第1次トランプ政権の中東への外交関与の実績とされ、孤立主義からの離反を印象づけた。そもそもトランプ陣営は中国との全面対決の政策を打ち出すことで、国際的孤立を否定する軌跡をすでに印したともいえよう。