まず第1は「力による平和」の維持策である。
「力」とは総合的な強さだが、主体はやはり軍事力となる。トランプ氏自身、第1期の大統領時代には中国との戦争を防ぐ最善の方法として「中国と戦争をしても確実に勝つという能力を持つことが対中戦争を防ぐベストの方法となる」と明言していた。国家防衛戦略のなかでも明確な言明だった。
その姿勢の土台となるのは、「強い軍事力があってこそ平和が保たれる」という抑止政策である。同時にトランプ氏が一貫して唱える「強いアメリカ」という概念が重視される。その結果、国防予算が大幅かつ着実に増加される。この点は軍事忌避の傾向があるバイデン政権とは対照的である。なにしろバイデン政権の最新の国防予算は前年比1%増、トランプ前政権では一貫して10数%の増加だった。
第2には主権と国益の重視である。
この点は概念と実務の両方でアメリカという国家の利害、さらには独自の主権が強調されるだろう。概念というのはトランプ氏が常に主張する「アメリカ第一(America First)」という標語に象徴される。なにがあっても自国の国民の福祉や利益、自国の繁栄、安定、そして国益を優先する。いわば程度の差こそあれ、どの国家でも自然に履行されている原則である。「自国の利益よりも他国の利益を優先する」という政府や政治指導者がどこの国にいるだろうか。
この国益優先の実務というのは、トランプ政権がそのために実際に採用する施策のことである。トランプ次期大統領はカナダやメキシコという隣国、本来なら友好国にも特別な関税をかける方針を発表した。一見、乱暴な措置だが、その理由はアメリカ国内への麻薬性鎮痛剤「フェンタニル」の密輸入を防ぐことだった。自国の主権のどぎついまでの主張だといえる。
第3は他国への選別的な軍事介入である。
トランプ陣営はAFPIの発表政策では対外的な軍事介入は慎重にすると強調しながらも、「アメリカの国民が殺傷された場合、さらにはアメリカの国益が明確に侵害された場合には軍事力での行使による介入を躊躇わない」と述べている。ただし単に民主主義の拡散や人権の保護という普遍的、あるいは抽象的な目的のためには対外介入はしないと強調する。