この種の選別的な軍事介入としては第1期トランプ政権のシリアのアサド政権の化学兵器使用に対するミサイル攻撃での制裁やイランの革命防衛隊のスレイマン司令官のイラクでの殺害という実例がすでにある。前者は大量破壊兵器の使用という国際規範の重大違反、後者はアメリカ国民の殺傷への制裁だとされていた。トランプ政権はイスラム原理主義のテロ組織「イスラム国」(IS)を武力で壊滅した実例もある。

第4は中国を最大の脅威とみての強固な抑止策である。

トランプ政権は第1次の発足時から中国こそがアメリカにとって、そしてアメリカ主導の国際秩序にとって最大の脅威と見做し、強い対決と封じ込めの戦略を発表した。

「オバマ政権にいたるそれまでの歴代アメリカ政権の対中関与政策は失敗だった」と宣言した。その結果として軍事面では中国の大軍拡を抑える目的での国防予算の大増額を開始した。中国への抑止効果の大きい潜水艦発射の中距離核巡航ミサイルの開発にも踏みきった。経済面では中国の全面的な切り離し(ディカップリング)を唱えるにいたった。

バイデン政権はこの間、トランプ前政権の強固な対中政策のいくつかの部分を継承しながらも、軍事面などではソフトな姿勢を保った。中国との競合を唱えながらも、協力をも強調した。

しかし新年に登場する第2期トランプ政権は前政権での対中抑止をさらに強化する封じ込め策を採ることが確実視される。その背景には「アメリカの国家の根幹を揺るがせうる脅威は中国であってロシアではない」という基本認識があるといえる。

第5は既存の同盟関係の堅持と強化である。

トランプ氏の同盟観については「北大西洋条約機構(NATO)を軽視、あるいは離脱」という憶測がしきりだった。「日米同盟も破棄するかも」という推測もあった。だがこの種の推測はみな反トランプとなったジョン・ボルトン氏のような敵からの誇大情報がほとんど。

トランプ次期政権の同盟政策は前述のAFPIの政策発表が真実を告げる。そこではNATOの堅持と強化が明確に記されている。ただし集団同盟体制での防衛費の負担は欧州側に公約通りのGDP2%以上という水準を求める。「公正な負担がなければ、アメリカはその国を守らないかも」という骨子の言葉はみな欧州側に公正な負担の実現を促す「取引(Transaction)的」な言辞だという。