実際、19世紀のイギリス・マンチェスターにあるBroughton Suspension Bridge(1831年)で、行進中の部隊が橋を渡る際に共鳴が起こり、崩壊したとされる有名な事例があります。

この事故をきっかけに「橋の上では行軍パレードを行ってはならず、兵士たちの足並みを崩すべき」というのは軍事関係者の間では常識となりました。

以上の事実は、鉄球からワイングラス、巨大な橋まで全ての物体は共鳴周波数を持っていることを示しています。

では生物は……そして細胞にも共鳴周波数は存在するのでしょうか?

結論から言えば、理論的には、細胞にも共鳴周波数は存在します。

ただ金属や硬質ガラスのように内部摩擦が少ない物質とは違い、細胞のように軟らかい(柔軟な)素材はエネルギーを散逸させやすいため、共鳴周波数を特定するのはかなり困難です。

また細胞1つ1つの重さは非常に軽く、人間の平均的な細胞の重さは数ナノグラムしかないため、振動を計測したり動きを観察するのは困難です。

それが生きている細胞となれば、さらに困難を極めることでしょう。

研究者たちはどのようにして、この問題を突破したのでしょうか?

ヒト細胞の共鳴周波数を特定する

生きているヒト細胞の共鳴周波数をどうやって測るのか?

理論的には2つの方法が存在します。

1つはワイングラスや音叉、そして崩壊する橋のように、外部から振動を与えて、細胞の揺れやすい振動パターンを探すという方法です。

しかし生きている細胞の場合、実験に使用する振動によって細胞の生命活動に影響が及んで細胞が変質してしまい、測定結果が「本当にもともとの細胞の共鳴周波数かどうか」の区別がつかなくなってしまう可能性があります。

そこで今回の研究ではもう1つの方法として、細胞の振動をダイレクトに計測する方法が考案されました。

外から振動を与えて細胞の揺れやすさを確認するのではなく、生きている細胞そのものの自然な振動パターンを計測できれば、そこから共鳴周波数を導くことが可能だからです。