人間でたとえれば、どんな堅物な人でも、つい体が動いてしまう好みのリズムがあるようなものです。

より専門的には、物体の内部には、多かれ少なかれ分子や原子同士の結合や相互作用(弾性力)があり、振動によって質量が動かされるたびに(慣性力がはたらくたびに)エネルギーのやり取りが生じる状態が発生します。

この物体内部の粒子質量の揺れ動き(慣性力)が、物体に隠されたみえないバネやブランコの正体となります。

ある意味で、共鳴周波数の正体は物体内部の粒子の慣性力に起因するとも言えるでしょう。

そのようなリズムは、たとえ力が小さくても、物体そのものの性質に刻み込まれているため、物体を簡単に揺れ動かすことができます。

画像
Credit:Canva . 川勝康弘

そしてブランコの例のように、外部からの振動周波数がちょうど物体固有の振動モードと合っていると、エネルギーが効率的に蓄積され、振幅が雪だるま式に増幅されます。

言い換えれば、波のピークを逃さずにつかんで、次のピークへとさらに高く押し上げているようなイメージです。

これがいわゆる共鳴周波数による「増幅効果」の正体です。

より厳密には「共鳴周波数ではエネルギーが効率よく蓄積されるため、内部の原子や分子が協調して大きく動き、周囲を巻き込む形で弾性エネルギーが増幅される」という状態が起こります。

一方、固体に含まれる原子や分子は、結合のちぎれに抵抗する力を持っているものの、その限界を超えるほどの変位が繰り返し起これば亀裂が走り、ついには破壊されてしまいます。

「オペラ歌手が高音でワイングラスを割る」というエピソードも、ワイングラスにも、独特の形状や厚みなどから生まれる「固有の揺れやすい周波数」があり、そこへちょうど同じ周波数の音の波が何度もグラスを揺らすと、振動の振幅が際限なく大きくなり、ガラスの限界点を超えた瞬間にヒビが入って割れてしまうのです。

他にも軍隊が規則正しく橋の上を行進していたときに、軍隊の足踏みのリズムが運悪く橋の共鳴周波数と一致してしまうと、軍隊の重量が橋が十分に耐えられるものであっても、振動によって橋が崩壊してしまうこともあります。