また細胞の質量は比較的安定しており、約4.08 ngから±5%の範囲で変動しました。
こうした成果から研究者たちは、細胞の共鳴周波数を「健康な細胞と病変細胞を区別する指紋」として活用できる可能性を示唆しています。
たとえば、がん細胞だけが示す特異的な共鳴周波数を狙い撃ちできれば、周囲の正常細胞を傷つけずに病巣だけを破壊できるかもしれません。
これは超音波治療や音響治療の分野を大きく前進させるアイデアとなり得るでしょう。
加えて、骨折治療や組織再生における超音波利用の精度をさらに高めることも視野に入ります。
さらに、より高い周波数でも測定できる微小な装置(マイクロメカニカル共振器)の開発が進めば、観察できる細胞の「振動モード(揺れ方)」が増えて、今よりずっと詳細な「細胞振動分光法」を確立できるでしょう。
振動の細かい情報を正確にとらえられるようになれば、がん細胞の破壊だけでなく、細胞がいまどんな状態なのかをリアルタイムで見極め病気の早期発見や新しい治療方法の開発に大きく貢献する可能性があります。
研究チームは今後、異なる種類の細胞や病巣細胞に対しても同様の測定を行い、その指紋とも言うべき周波数マップを体系的に構築していく予定だと述べています。
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元論文
Measuring Vibrational Modes in Living Human Cells
https://doi.org/10.1103/PRXLife.2.013003?_gl=1*ij52yi*_gcl_au*MTQ1MjgyNDczMS4xNzMyNjY0MTEx*_ga*NDc0MDg5NTkwLjE3MjAzOTI3NTM.*_ga_ZS5V2B2DR1*MTczNTE3ODczNS41OS4wLjE3MzUxNzg3NjEuMzQuMC44OTM3NjAwMw..
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。