もちろん、ヨーロッパ中でつねに排斥や虐殺の対象となる危険と紙一重の生活をしていたユダヤ人にとって、ヨーロッパ的であることは決して自由とか平等とかのきれいごとではありませんでした。
社会が支配階級と隷属階級とに分かれるものなら、どんな手段を使ってでも支配階級側に潜りこみ、絶対に隷属階級にはならないという決意表明だったのです。アメリカではヨーロッパのいくつかの国とは違って州法でユダヤ人の土地所有を禁じた州はなかったようです。
(ただし、いまだにアメリカ好きの日本人にとってあこがれの的であるカリフォルニア州では日系人の土地所有を禁じていました。さらに、同州では日系人が土地を賃借することさえ禁じました。カリフォルニアはおそらく深南部と同じくらい東洋人差別の強い土地です。)
それでも、とくに南部でプランテーションを経営できるほどの広々とした土地をユダヤ人が手に入れることはむずかしかったでしょう。それなら、比較的入手しやすい貿易船を手に入れてまさに奴隷として隷属する側ではなく、奴隷を農園主に売りつける側に回ろうとしたのです。
このへんの抜け目なさを蛇蝎の如く嫌う古典的な白人至上主義者たちが、現在はイスラエルによるパレスチナ人ジェノサイドを批判していくらか勢いを盛り返しているし、またパレスチナ人との連帯を訴える人たちのあいだにも、彼らと共闘する動きも出てきたのですから、アメリカの政治情勢はいよいよ混とんとしてきました。
第2期トランプ政権の国防長官候補に話を戻すと、おそらく第2期の就任式までにガザでハマスが確保している人質を全員解放しなければ、トランプは本気でガザに住むパレスチナ人皆殺しにOKサインを出すでしょう。
もちろん、計算高い人間なので「軟弱になったアメリカ国民は口ではどんなに威勢のいいことを言っていても、出征した娘や息子が遺体袋に包まれて無言の帰還をすることには耐えられない」と知っているので、カネや兵器を出すだけで米兵は派遣しないでしょう。