こんにちは。

今回も先日YouTubeで公開した勉強会『奴隷制と人身売買の歴史』について、映像ではしゃべりきれなかったことを大幅に補足して文章化しようと思います。

Moussa81/iStock

なお、YouTube映像では表紙と最終ページを除いた図表は18枚でしたが、今回は4枚追加して22枚となっています。そして、18~20枚目にはかなり残虐な印象を受ける写真も出てきますので、あらかじめご諒解の上お読みいただきたいと思います。

弥助論争の意味すること

下半期にあまりにも重大ニュースが続出したためすっかり影が薄くなった感がありますが、今年の7月にアサシンクリード(「暗殺者の信仰告白」とでも訳すのでしょうか)というゲームシリーズを出しているフランスの企業が、次回作は一時織田信長に仕えたことのある黒人、弥助を主人公にしたゲームだと発表して、かなり話題になりました。

新しもの好きの信長が、イエズス会の宣教師たちの連れてきた黒人奴隷を珍しがってもらい受け、弥助という名を与えてそばに召し使って自分の刀を持たせる程度のことはしたかもしれない、その程度のいたってマイナーな従者としてちらっと登場するだけの存在です。

ところが映画で言えば予告編に当たるデモ映像では、この弥助が鎧兜に身を固めた勇将ということになっている、いい加減としか表現しようのない設定でした。おまけに、戦国時代の日本を描くと称しながら、建物は日本なのか、中国なのか、はたまた東南アジアなのかさえ判断できないようなでたらめな考証しかしていなかったのです。

さすがに抗議が殺到したようで、制作会社は当初の11月発売予定を来年2月に繰り延べたのですが、9月にこの日程変更が発表された頃にはコアなゲームマニア以外にはほとんど注目する人のいないニュースになっていました。

ロシア軍のウクライナ侵攻に対抗したウクライナ軍のロシア連邦内クルスク州の占領、イスラエルによるガザのパレスチナ人ジェノサイドがレバノンのヒズボラ幹部大量暗殺に拡大、そしてアメリカ大統領選での土壇場の民主党公認候補交代といった現実世界の動きがあまりにも大きかったからです。