現代アメリカの政治地図では、中東でもイスラエル人だけは白人、それ以外の中東、アフリカ大陸、アジア、南北アメリカ大陸、オセアニアの先住民はすべて有色人種として白人よりずっと命の価値が安いということになっています。
ところが、ときおりイスラエルによるパレスチナ人への蛮行があまりにもひどくなると、「白人は有色人種に対して何ひとつ悪いことはしていない。悪いのは全部ユダヤ人だ」という古典的白人至上主義を堂々と主張する連中が出てきます。
次のような投稿をXにしているのも、この手の古典的白人至上主義者です。
黒人を奴隷として使役し、奴隷から生まれた子どもは全部奴隷として父母から奪い取ってできるだけ高く売りつけるといった非情な経営方針によって黒人家庭を崩壊させたのは、もちろん白人プランテーション農園主です。
ところが、古典的な白人至上主義者たちは黒人を奴隷としてこき使って彼らの家庭を崩壊させたのも、ユダヤ人の仕業だと堂々と主張するのです。
もちろん根も葉もない作り話ですが、ユダヤ人の中でもとくに上昇志向の強い人たちのあいだには、白人にそういう言いがかりをつけられるのも無理はないと思える行動をとった人たちも多いのです。
たとえば、三角貿易の中でもとくに利益率の高い西アフリカからアメリカへの中間航路の貿易船の船主は、ほとんど例外なくユダヤ人でした。
ヨーロッパ中で偏見と蔑視、迫害にさらされていたユダヤ人たちの中でも知的エリート層を形成していた人たちは、自分たちが「ヨーロッパ以上にヨーロッパ的でありたい」と熱情をこめて語っていました。
どこでも無権利状態のユダヤ人は常に西欧主義者であり、ヨーロッパ人である。(…)しばしばロシア人以上にヨーロッパ人であり、時にヨーロッパ人以上にヨーロッパ人である。
鶴見太郎著『イスラエルの起源――ロシア・ユダヤ人が 作った国』(講談社選書メチエ、2020年)、127頁