そこに、突然最先端兵器をもったヨーロッパの白人たちが襲いかかったのです。しかも、彼らはたかだか400~500年前の十字軍遠征のとき同様に、異教徒や異端者は悪魔の手先だから、妥協の余地なく殺し尽くすべきだという信念を持つ偏狭な狂信者集団でした。

今でもアメリカのプアホワイトの中には、当時の十字軍がおこなった無差別大量虐殺を完全に正当化する人たちがいて、次の3枚組の絵をXに投稿しているハンドルネームTemplarpilledさんはその典型です。

「寛容はクリスチャンの美徳ではない」「悪魔と和を結ぶな! 殺せ!!」そして「十字軍の行動は完全に正当だった」ということばを、具体的な歴史的事実に置き換えれば以下のとおりです。

第1回十字軍が1099年にイェルサレムをおとしたときである。十字軍士たちは、まるで血に飢えた野獣のように、老幼男女をかたっぱしから殺していった。非戦闘員だからといって容赦はしなかった。いたるところで人間狩りが行われた。こうした事情について、イェルサレム攻略戦に従軍した南フランスのある聖職者はつぎのようにのべる。 「そこには、感嘆すべき光景がみられた。……イェルサレムの大通りや広場などには、人間の首や腕や足がうず高く積みあげられていた。兵士や騎士たちは死骸をおし分けながら進んだ。……神殿や回廊は、馬上の騎士のひざ、馬の手綱のところまでも朱に染めるほどの血の海だった。……これほど長いあいだ、冒涜をほしいままにしていた人びとの汚したこの場所が、かれらの血にそまることを欲し給うた神の裁きは正しくもまた讃うべきである」。

鯖田豊之著『世界の歴史 9 ヨーロッパ中世』(河出書房新社、1989年)273~74頁

11~13世紀にかけて「自分たちの敵は人間ではなく、悪魔の手先か自分たちより下等な動物だ。だから抵抗する手段のない女性や子どもたちまで皆殺しにしてかまわない」という心情を支えていたのは十字軍精神でした。