右手手前にはおそらくこの農園の主である、年配の白人男性が指揮を取るための短い棒を持って、こちらは測量器か整地の器具を持った若い助手ふうの白人男性と話をしています。左端にはこれみよがしに暇つぶしに女の子の髪を結っている男の子、どちらも当然白人です。
中央には鎌を左手に持ち替えて右手で金属製のコップから水を飲んでいる黒人青年と、彼に水を運んできたやや年配の黒人女性、その間で三つ又の熊手のような農具を持っているのはまだ10代の黒人少年でしょう。
荷馬車一杯に麦わらを積んでいる陰では、父親とは限りませんが大人の黒人男性の手伝いをしている黒人の女の子の姿が見えます。黒人奴隷は常に手足を動かして働いているもの、白人のおとなはのんびり話をしながら全体を指揮しているし、白人の子どもたちは屈託なく遊んでいるという序列がはっきり分かれているのです。
全面監視社会での奴隷労働の効率の良さは、次の地図グラフからも読み取ることができます。
表向きは奴隷解放をめぐって戦われた南北戦争が勃発する約10年前のアメリカ地図ですが、南部だけではなく北西部まで広大な地域が黄色に乗られていて、黒人の自由民比率は2%以下となっています。
また緑色の2.01%~10%、つまり黒人100人のうち自由民は2から10人しかいないという地域もテキサス州中心に南部でかなり多く、この2つの色に塗られているのは基本的に黒人を見れば奴隷と判断しても大きな間違いではなかった地域です。
逆に黒人の99.1%以上が自由民で奴隷は100人のうちひとりにも満たないという紺色の地域もニューイングランド地方からニューヨーク州、そして5大湖沿岸諸州にかなりの面積を占めています。黒人を見れば即自由民と見て間違いがなかった地域です。
青緑に塗られているのは、黒人が10%超~99%まで、もし黒人の中で奴隷と自由民が意図的な棲ませ分けをされていなかったらたいていの地域がこの色に塗られるだろうという地域になるはずですが、現実には非常に細かい地域が点在しているだけで、総面積は異常なほど小さくなっています。