その分析は別の機会に譲るとして、この「999」はというと、神の手をどう巧く見えなくするかよりも、主人公の旅の動機と目的にフォーカスして整合性を保ち、ほかの諸々についてはヒロインの悲劇性とその別れに昇華させる、そういう割り切りのいい脚本だったといえるだろう。

同じ脚本家による映画「約束」(1972年)

最後に音楽的な話をさせていただきたい。青木望による叙情的なオーケストラ曲に見送られながら空に消えていく999を、見つめる鉄郎。そこに当時の人気絶頂バンド・ゴダイゴの熱唱が被さる。

この「銀河鉄道999」という歌、分析してみるとビートルズの代表曲「イエスタディ」と同じ作りである。

♪さあゆくんだ、そのかおをあげて♪

♪イェスタディ、オールマイトラボーシーソファーラウェィ

口ずさんでほしい。長調で始まって、途中で短三度下の旋律的短音階に切り替わって、旋律が駆けあがっていく。

ただ「イエスタディ」が、タイトルが示すように後ろ向きの歌なのに対し「999」はどこまでも前向きだ。日本語詞も、英語原詞も、挫折からの再起を歌い上げる。

昭和54年は遥か過去、20世紀は過ぎ去り、2010年代すらレトロの対象となりつつある令和の今も「銀河鉄道999」は弾かれ、歌われている。青春の夢破れし者が、それでも立ち上がって、次に向かっていく… それはこの宇宙冒険鉄道メロドラマ青春映画の魂そのものである。

石森史郎さん、この荒唐無稽な物語に、あなたは不滅の命を授けてくださいました。現在93歳というそのご長寿を、この場を借りて祝福申し上げます。