ところが『読売』記事の地図にはチベット自治区だけしか記されておらず、それとほぼ同じ面積でありながら青海省(Qinghai)・四川省(Sichuan)・甘粛省(Gansu)・雲南省(Yunnan)の一部になってしまったアムド(Amdo)とカム(Kham)の一部が抜け落ちているのである。会議はチベット自治区ではなくチベットとチベット族の支援なのだから、『読売』の失態である。
もう少し「現在」の話を続ける。米議会系メディア『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』はこの11月15日、トランプ次期米大統領がマルコ・ルビオ上院議員を次期国務長官に選んだことは「ウイグル族とチベット族に歓迎される」との記事を掲載した。
この人事にトランプの天敵ペロシ前下院議長も、12月10日にDCで開催された「国際チベットキャンペーン」での演説で、ルビオ上院議員を国務長官に選んだことは、次期トランプ政権がチベットにおける人権侵害をめぐり中国政府に圧力をかける超党派の動きを続けることの表れだ、と期待の弁を述べた。
自身キューバ移民の子であるルビオは18年、米国民のチベット入国を禁じる中国当局者の米国入国を拒否することを目的とする「チベット相互アクセス法(Reciprocal Access to Tibet Act)」を共同提案し、また20年にはダライ・ラマの転生に関するいかなる決定もダライ・ラマ自身とチベット社会のみに委ねられるとして、独自の後継者を擁立しようとする北京の目論見に反対するの「チベット政策支援法(Tibet Policy and Support Act)」の制定も推進した。
本年6月には「チベット相互アクセス法」の6回目の議会報告がなされたが、その詳細な報告書は国務省のサイトで誰でも読むことが出来る。こうした米国によるチベット支援が行われていることを、筆者も今回『自伝』を読んで湧いたチベットへの関心から、『RFA』や米国務省サイトを渉猟して初めて知った。