そして、この歪みが継続することは、旧一電等が内外無差別のコミットメントを受け容れる理由がなくなることを意味する。すなわち、法令上根拠がない内外無差別を旧一電等が自主的にコミットするのは、内外無差別な電力卸売をすることが利潤を最大化する経済合理的な行動であって、株主の利益に適うことだからのはずである。
ところが、経過措置が残置されていることにより、内外無差別は旧一電等にとって明確に不利益をもたらすものとなり、自主的にコミットすることが正当化できなくなる。内外無差別を推進する立場であり、かつ制度を司る立場でもある監視等委がこの状態を放置してよいはずはなかろう。
内外無差別により、自社保有の電源であっても自由に調達できない環境に置かれることは、相当な競争圧力となると思料する。「シェア5%以上の有力で独立した競争者が区域内に2者以上存在」はあくまで例示と割り切って、速やかに経過措置は解除されるべきである。
ちなみに、この②の条件について、「大手電力が越境すれば、すぐにでも満たせる。今でもありえないくらい緩い基準」とのコメントがあるが(電気新聞2024年9月20日1面)、自社が他エリアに越境しても経過措置は解除されない。
他社が越境してこなければならない。特に、安い競争力がある電源を抱える旧一電A社が内外無差別な卸売によって、供給力を旧一電B社に販売したとしても、B社がA社エリアに越境してくるとは限らない。おそらくはA社よりも電気料金が高いエリアへ参入してより大きな利益を得ようとするだろう。
つまり、安い競争力がある電源を抱える旧一電ほど②の条件を満たすのは難しい。新規参入シェアが少ないのは、当該旧一電が極めて効率的だからである可能性も否定はできない。
表面的な新規参入シェアの基準にこだわりすぎるのは、旧一電の効率化インセンティブを削ぐ弊害もありそうだ。このように考えると、このコメントは大手電力が示し合わせて越境しあうことを促しているようにも読めて、筆者は違和感を持つ。
4.4 規制需要相当分の供給力を事前に確保することは不適切なのか