以上の前提の下で;
A社発電部門が規制需要相当分の先取りをせずに卸売電力の公募を行った。その結果、A社小売部門以外に新電力C社も相当量を落札し、その取引価格が17円/kWhであったとする。 C社はA社よりも発電コストが高いB社のエリアで、購入した電気を原資に小売供給を行う。17円/kWh で仕入れた電気を19円/kWhで販売しても、B社のエリアでは競争力がある。 A社発電部門は、発電コストが15円/kWhの電気を17円/kWhで売却できたので、2円/kWhの追加の利益を得る。 A社小売部門はC社が相当量を落札したことにより、自社需要に対する供給力が不足し、不足分を社外から調達する必要が生じる。そのとき、A社小売部門が購入可能なのは、C社が進出することにより、B社発電部門で余剰となった20円/kWhの電気である。 この場合、A社小売部門の収支は、発電部門の卸売電力の公募により生じた追加の利益2円/kWh(=17-15)が控除収益となり、費用削減に貢献する。他方、不足した電力量を高値で購入した影響で、5円/kWh(=20-15)だけ費用が増加する。2円/kWh<5円/kWhであるので、A社小売部門の収支は悪化する。
上のケースは「適正な費用回収が可能」にあたるのかどうか。
監視等委の見解の中の「発販一体でとらえれば適正な費用回収は可能であり」は、文理解釈上は、(1) 常に適正に費用回収できる、(2) 適正に費用回収ができることもある、の両方に解釈し得る。もし(1)の意味で使われているのであれば、すなわち、上で掲げた例に即して言えば、
X:A社発電部門が新電力Cに対する高値卸売により得た利益 Y:A社小売部門が自社内で不足した供給力を社外から高値調達することによる損失(あるいは逆ザヤ)