として、X=Yが常に確保されるのであれば、監視等委が四国電力の行為を合理的な理由がないと判断することは理解できる。

しかし、経済学の教科書に出てくるような理想的な市場、具体的に言うと市場価格が単一の価格に収れんしている市場を想定しなければ、これは成立しない。現実の市場、特に相対契約の市場では、通常は売買価格は多様であり、単一の売買価格を想定することは現実的でない。

以上のように考えると、「適正な費用回収が可能」は上記の(2)と解釈するしかないと思われる。これをもって、四国電力の行為を合理的な理由がないと断じることは適切なのかどうか。この場合、監視等委は「発電部門で生じた追加の利益は控除収益となって、小売部門の逆ザヤがある程度緩和される」ということを言ったに過ぎない。更に端的に言えば「控除収益とは何か」を説明したに過ぎない。

仮に、監視等委の意図が(2)であるとすれば、筆者はかつて限界費用玉出しをめぐって行われた次のような問答を想起する。

P「スポット市場に固定費を含まない限界費用により売り入札をすれば、電源の固定費が回収できない」 Q「スポット市場はシングルプライスオークションであるので、当該電源が落札すれば、市場価格は必ず当該電源の限界費用以上となるので、その差分によって固定費は回収できる」

確かに、シングルプライスオークションの市場では必ず「市場価格≧落札電源の限界費用」となる。しかし、この差分が回収すべき固定費を満たす額になる保証はない。すなわち、Qの回答は上記(2)の意味である。そして、こうした粗雑な言質をよりどころに大手電力に限界費用玉出しを強いた結果、固定費回収が見通せない火力電源が退出し、足元で電力需給不安を招いている。

同様に、監視等委が(2)すなわち「Xが控除収益になることでYが(ある程度)緩和される」程度の理由で、四国電力の行為を合理的な理由がないと断じたとすれば、これも粗雑に過ぎる。四国電力が規制需要相当分の供給力を公募対象とは別枠で確保したのは、経過措置を残置したまま内外無差別を求められることにより、規制需要への供給に生じる新たな収支のリスクを回避しようとしたためである。これは合理的な理由であると思料する。

4.5 内外無差別の徹底により電気の安定供給に悪影響が及ぶ懸念